自分で作る株式会社のステップ3です。
このステップから実際に株式会社を作る作業を始めていきます。
具体的には「定款」を作成していきます。
ステップ2でも書きましたが、定款とは会社のルールを定めたものでしたよね。
会社のルールを作ると聞くと難しそうに感じますが、定款にはある程度テンプレートが存在しますので、下記に定める項目を決めていき、それを定款のテンプレートに当てはめていけば一般的な株式会社の定款を作ることができます。
決定項目リストの作成
定款は発起人全員で作成する必要があります。
- 商号 (株式会社の名前)
- 本店所在地 (会社の住所)
- 目的 (会社の事業内容)
- 公告方法 (特定事項の報告方法)
- 資本金の額
- 発行可能株式総数 (株式会社が発行することができる株式数)
- 設立時に発行する株式数
- 譲渡制限規定の有無 (株式の売買等を自由におこなえるか)
- 発起人 (会社を設立しようとしている人)
- 発起人の株式引受数
- 機関構成 (取締役会の設置や、監査役の設置の有無)
- 役員 (取締役や監査役等)
- 役員の任期
- 事業年度
各項目についてどのように決めていけば良いかのポイントと、それぞれの注意事項を確認していきましょう。
「商号」を決めるポイントと注意事項
「商号」とは株式会社の名前のことです。
よっぽどのことがない限り、商号を変更することはないと思うので慎重に決めていきましょう。
なお、商号はローマ字を使用することもできますが、「株式会社」の文字を入れないといけません。
株式会社の文字は、頭につけても、後ろにつけても大丈夫です。
例:株式会社○○、○○株式会社
「本店所在地」を決めるポイントと注意事項
「本店所在地」は簡単にいうと、株式会社の住所のことです。
住所は自宅でも、事務所を借りているのであればそこでも構いません。
最近では、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを本店所在地にされている方も多いですね。
レンタルオフィスやバーチャルオフィスで登記することはできるのですが、もしあなたが株式会社で許認可を取得するようなことがある場合は注意が必要です。
許認可の取得の際に、事務所調査があるような場合、バーチャルオフィスでは事務所の実態が存在しないので許可が取れない場合があります。もし許認可取得を前提としている場合は、事前に担当行政に確認しておきましょう。
最小行政区画までにしておくことで、同一市内での本店移転があった場合に、定款変更をする必要がなくなるため3万円の節約に繋がります。
仮に、定款に詳細な住所 ○県○市1-1 と記載しており、○県○市1-2 に本店移転した場合は、定款を変更する必要があり、登録免許税が必要になります。
「目的」を決めるポイントと注意事項
「目的」は株式会社がおこなう事業内容を決めていきます。
基本的に株式会社はここで定めた目的以外の事業をすることができないので、おこなう事業はすべて記載するようにしましょう。
よくある質問で、設立後すぐにやる予定がない事業でもいいのか?と聞かれますが問題ありません。将来おこなう可能性があれば記載しておきましょう。
ただし、金融機関から融資を受ける場合に、本来事業とあまりにもかけ離れた事業を、複数個定款に定めたり、投資事業を定款に定めていることを嫌う金融機関が存在するという話もあります。その場合、定款変更で目的を変更することを条件にされる場合もあるみたいです。
また、許認可を取得される場合は、許認可の要件として「目的」に一定の記載をしておく必要があります。
(例:建設業法に基づく建築一式工事の施工・監理や、旅館業法に基づくホテル営業etc.)
「公告方法」を決めるポイントと注意事項
株式会社は、定時株主総会終結後遅滞なく決算公告をする義務や、その他特定事項が生じたときの報告する方法として公告をしないといけない場面が生じます。
その際の公告方法として
①官報に掲載してする方法
②日刊新聞紙に掲載してする方法
③電子公告による方法
の3種類が存在します。
ここに関しては、特別の事情がない限り①の「官報に掲載してする」を選択しましょう。
「資本金の額」を決めるポイントと注意事項
資本金は設立後の会社の運転資金になるもので、会社の体力を表すものです。
以前までは株式会社を設立するときには1,000万円以上の資本金が必要でしたが、現在は1円以上であればいくらでも構いません。実際には資本金1円の会社はほとんどありませんが…
※ここで決めた資本金は「発起人」が実際に払込む必要があります。
資本金を決めるポイントはいくつかあります。
①資本金が1,000万以上であれば「消費税の課税事業者」に該当してしまう。
株式会社を作るメリットの一つに消費税が、最長2年間免除されるというものが有ります。
消費税の免税を受ける場合は1,000万円未満にしましょう。
②資本金が低すぎると融資を受けにくくなる
融資を考えている場合は、あまりにも低い資本金の額にしていると融資を受けにくくなります。資本金1万円の会社と資本金1000万円の会社では、信頼性が高いのはどちらか一目瞭然ですね。
基本的に資本金の額が高い方が融資を受けやすくなります。
③許認可と資本金の関係
資本金の額が許認可の要件になっている場合があります。設立後に資本金を変更するのは手間なのであらかじめ確認して、要件以上の資本金にしておきましょう。
今まで設立に携わってきた感じでは、一般の会社なら100万円か300万円、建設業をする方なら500万円が多いですね。
「発行可能株式総数」を決めるポイントと注意事項
発行可能株式総数とは、会社が発行することができる株式数の上限のことです。
後々のことを考えれば、次で決める「設立時発行株式数」100倍ぐらいに設定することをおすすめしますが、発行可能株式総数が10,000株で、設立時に100株しか発行しないのは見栄えが悪いという方は、10倍程度に設定しておきましょう。
「設立時発行株式数」を決めるポイントと注意事項
設立時発行株式数は、そのままですが、設立時に発行する株式数です。
上で決めた発行可能株式総数の範囲内で決めましょう。
よくある決め方は、資本金の額を1万円で割った数を設立時の株式数とします。
例:資本金300万円の場合
設立時発行株式数 300万円÷1万円=300株
発行可能株式総数 300株×10倍(100倍)=3,000株(30,000株)
「譲渡制限規定」の有無を決めるポイントと注意事項
譲渡制限規定とは、簡単にいうと株式の売買等をするときに、会社側の承認を必要とするかどうかということです。株式の全部に譲渡制限がある会社を「非公開会社」、一部でも譲渡制限規定がない株式を発行している会社のことを「公開会社」といいます。
非公開会社か公開会社かで、後述する会社の機関構成がかわったり、役員の任期等に違いが出てきます。また公開会社の場合は、設立時発行株式数は発行可能株式総数の1/4を下回ることはできません。
では、譲渡制限規定はあったほうがいいのか(非公開会社)、ないほうがいいのか(公開会社)といえば、ずばり譲渡制限規定を設けた非公開会社にすることをおすすめします。
なぜなら中小企業では、株式を親族や従業員で持つことが多いですが、もし譲渡制限規定がなかった場合、売買等で株式が譲渡されれば、全くの部外者が株主になる可能性があるからです。
株主には株主総会の議決権があるので、部外者が経営権の一部を取得した場合は、思うように経営ができなくなることも…
非公開会社にしたときは、株式の譲渡等があった場合に誰が承認するのか決めておこう。
原則、取締役会設置会社は取締役会。そうでなければ株主総会となるが、定款で定めることで下記のパターンも可能になります。
取締役会設置会社の場合は、株主総会又は取締役会
取締役会非設置会社の場合は、株主総会、代表取締役または取締役の決定(過半数)
「発起人」を決めるポイントと注意事項
発起人は株式会社を設立しようと企画し、定款を作成し署名又は記名押印した人のことです。
発起人は最低1株以上の株式を引受けることが必要なので、会社設立後は会社の「株主」になります。
先ほども少し書きましたが、株主には大きな権限があるので、発起人(株主)になる人は慎重に選びましょう。
「発起人の株式引受数」を決めるポイントと注意事項
発起人が決まれば、各発起人が引受ける株式数を決めましょう。
発起人全員の引受数が「設立時発行株式数」と同数になるようにしてください。
発起人が一人であれば設立時発行株式数の全てを引受ければいいですが、仮にあなたとあなたの配偶者が発起人になる場合の引受数はどうするのがベストでしょうか?
半分ずつでいいと考えるかもしれませんが、もしあなたと配偶者の方で経営の意見が割れてしまった場合、お互いの株式数が同じであるため、どちらかの意思だけで決定することができなくなります。
あなたが思うように経営をしていきたい場合は、51%以上(株主総会普通決議を決めることができる割合)、できれば67%以上(特別決議を決めることができる割合)にしておくことをおすすめします。
「機関構成」を決めるポイントと注意事項
会社に設置する機関(さきほどからちょいちょい出てきている、取締役・取締役会・監査役等)を決めていきます。
代表的な3パターンから選んでください。
①株主総会+取締役
②株主総会+取締役+監査役
③株主総会+取締役会+監査役
おすすめは①ですが、公開会社の場合は③しか選択することができません。
「役員」を決めるポイントと注意事項
役員とは、会社の経営や、経営がしっかりおこなわれているか監査する人のことで、業務内容によって取締役や監査役と呼ばれます。
上で決めた機関構成に沿って、誰が就任するか決めていきましょう。
①を選んだ場合
取締役1名以上
②を選んだ場合
取締役1名以上、監査役1名以上
③を選んだ場合
取締役3名以上、監査役1名以上
代表取締役の決定
取締役が2名以上いる場合は、誰が代表取締役を務めるか決めておきましょう。
代表取締役を定めなければ取締役全員が代表権を持つこととなります。
代表取締役の決定方法も下記のパターンから決めていきましょう。
①株主総会
株主総会で決定する。議決権(株式数)が多い人が決定できる。
②取締役の互選
取締役による決定。
③定款
議決権(株式数)が多い人が決定できるが、変更した場合は定款変更手続が必要になる。
ここでのおすすめは①又は②です。
「役員の任期」を決めるポイントと注意事項
役員の任期は原則として取締役が、選任後2年以内に終了する事業年度の内最終のものに関する定時株主総会終結時まで。
監査役は選任後4年以内に終了する事業年度の内最終のものに関する定時株主総会終結時までです。
ただし、非公開会社の場合は定款に定めることによって、これを選任後10年以内に終了する事業年度の内最終のものに関する定時株主総会終結時まに伸長することができます
任期が満了すれば役員は退任することになりますが、任期満了後も同じ人が役員に再任することも可能です。しかし、同じ人が役員に再任する場合でも、役員変更登記が必要になりますので覚えておきましょう。
任期を決めるポイントは、一人会社の場合や、役員を親族(信頼できる人物)で固める場合は、役員変更登記の手間を考えて10年とし、第三者を役員に含める場合は、取締役は2年又は4年とし、監査役は4年とするのがおすすめです。
これは、役員と仲違いした場合や退任して欲しい場合に、任期が満了すれば自動的に退任することになるので、その機関を短くするという意図です。ただし、2年又は4年ごとに役員変更登記が必要になるので、任期管理にご注意ください。
「事業年度」を決めるポイントと注意事項
個人の場合の事業年度は1月から12月でしたが、法人の場合はこれを自由に設定することができます。
消費税の免税期間を長く取ろうと思えば、設立月を事業年度の始めの月とすることをおすすめします。
例:4月設立の場合 事業年度は4月1日から3月31日まで。
その他のポイントとしては、事業年度終了から2カ月以内に税務申告等の決算事務をおこなうこととなるので、繁忙期とかぶらないようにすることもあります。
リスト作成後にすること
印鑑証明書の取得
発起人と役員に就任される方が決まれば、その方の印鑑証明を取得しておきましょう。
定款認証や登記の際に必要になります。
はんこの発注
会社の商号が確定した段階で、会社の実印を用意しておきましょう。
会社の印鑑は通常3種類用意されることが多いです。
①会社実印
②銀行印
③角印
他に会社の住所や電話番号が記載されたゴム印をこの段階で注文しておいてもいいでしょう。
はんこは発注から手元に届くまで1から2週間程度掛かることが多いので、最短で設立したい場合はこのタイミングで発注しておきましょう。
定款の作成
今まで決めてきた内容を実際に定款に記載していきましょう。
定款はインターネットで検索すれば色々テンプレートが出てくると思うので、会社の内容に合うものを探してみてください。
少々お待ちください。
実質的支配者となるべきものの申告書作成
実質的支配者の申告書とは、会社の実質的支配者が暴力団員等に該当していないことを申告する書類です。平成30年11月30日から新たに始まった制度で、次のステップ4でお話する定款認証の際に一緒に申告します。
実質的支配者とは、一般的には議決権の51%以上を所有している者(その者が会社の経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合を除く。)のことで、雛形に住所氏名等を記入するだけで簡単に作成することができます。
まとめ
ステップ3は定款の作成についてお話ししました。
決定項目リストを埋めるために、各項目についてポイントや注意点を解説していますので、全ての項目を決定してください。
また、商号や発起人、役員が決まった段階で「会社実印」と「印鑑証明書」の準備をしておきましょう。
次のステップは、今回作った定款を認証する方法を解説していきます。
コメントを残す